ただのパスタとばばあの話。

某お店のパスタを食べてきた。


以前から、友達が「ここのパスタが一番美味い」「ここのパスタを食べたら他のところで食べれない」とまで言っていて、ずっと気になっていた。

 

どのくらい美味いのだろうか。

 

そもそも、俺はパスタが大好きだ。

みなさんにはあまり馴染みがないだろうが、何を隠そうこの私は、デニーズやジョナサン、サイゼリアといった高級店で毎日のようにパスタを食べ、舌を肥やしているほどである。

そんな生活を続けていたためか、今では、パスタを食べすぎてイタリア人と間違われるくらいだ。

マンマミーアのボンジョルノで、グラッツィエである。


お店に着くと、前評判通り、美味しくて人気があるのか、若者のカップルやおばさんが列を作っていた。

お昼時でもないのに、6人くらい並んでいただろうか。

店内をちらりと覗くと、それほど広くはないようだ。

オープンキッチンのような形になっていて、それを含めても学校の教室くらいの広さであった。

 

お店の前に、料理の写真付きメニューが置いてあったのだが、確かにどれも美味そうである。

しかしながら、そのメニューに書かれている料理名は、コンタディーノ、ガンベローニなどなど、どれも聞いたことのない名前のパスタばかりだ。

見た限りでは、俺の親友であるミートソースくんや、カルボナーラくんの姿がない。

「なるほどなるほど、そうきたか・・・」

どうやらこの店は、パスタにわざと難解なネーミングを付けることで、こちらを怯ませようとしているようだ。

ミートソースくんや、カルボナーラくんがいないとわかった今、信じられるのは己のみとなった。

「こいつぁ、一筋縄ではいかなそうだぜ・・・」

このお店は想像以上に強敵のようだ。

俺のパスタ魂が久々に燃えたぎった。

 


その後、思っていた以上に回転率が早く、並んで10分を待たないうちに席に通された。


席に座ると、店員であるおばさんに、水をバン!っと置かれ、すぐさま「ご注文は?」と聞かれた。

俺は、まだ決めていなかったため、「あ、まだ決めてないので・・」というと、そのおばさんは、「外にもメニューが置いてあるので、待っているときに決めてもらっていればスムーズだったんですけどね!」と、若干、怒り気味に嫌味っぽく言われた。

このおばさんは、俺が強大な力を持った際に、真っ先にこの店からクビにしてやるつもりだ。


結局、”パスタ二トマトソーストチーズヲカラメタヤーツ”みたいな名前のパスタを注文した。


お店の中は、ホールにこのおばさん、キッチンに男性が1人、そして、ホールとキッチンの両方を手伝っている若い女性の3人でやっているようであった。

お店は小さいながらも、席が空くことがないため、キッチンの男性は大忙しでセカセカと料理を作り、ホールのおばさんも、若い女性もこの狭いお店をずっとセカセカと動いているので、目障りと言ってはなんだが、すごく気になった。

 


そうこうしていると、「はい、どうぞ」と注文した料理が、おばさんによって運ばれてきた。

 

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「なんだこれは」

盛り付けはお世辞にも綺麗とは言えないし、上に乗せられたチーズは固まっていて、全然パスタに絡めて食べることは不可能だ。

 

周りのお客さんをみると、みんなニコニコして美味しそうに食べているし、これは俺だけに対する嫌がらせのように思えた。

確かに俺は、ホヨッとしたとても可愛い顔立ちをしているので、普段から人の妬みを買い、こういった嫌がらせを受けることが多々あるのだが、飲食店では初めての経験である。

可愛い顔を持っているというのは、決して楽な人生ではないのだ。

 

しかし、俺は可愛い顔と一緒に、日本列島を覆いつくすほどの寛容な心の持ち主でもある。

「忙しくて盛り付けにまで気が回らないのだろう、しょうがない」

優しい俺は、すべてを許すことにした。

肝心なのは味だ、料理というものは、結局のところ味さえ美味しければすべてOKなのだ。


にこやかにフォークを手に取ると、パスタを絡ませ、ぱくりと一口食べてみた。


「うむ、美味しくない」

 

なんだかトマトソースが妙に水っぽく、味がとても薄いのである。

これだったら、コンビニのパスタのほうが1億倍美味いなと思った。

友達は本当にここのパスタを食べたのだろうか、そして、本当に美味いと思ったのだろうか。

なんならば、茹でてないパスタをそのままバリバリと食べたほうが、まだ美味しいレベルであった。

 


1口食べ終えると、俺はフォークを置いて考えた。

「どうすればこのパスタを食切ることができるか」

考えに考えた末、ひとつの妙案を思いついた。

そうだ、せめて粉チーズを大量に振りかければ味を誤魔化せて食えるのではないか、と。

 

すぐさま近くにいたおばさんを呼び、「粉チーズはもらえないのか」ということを尋ねると、「大丈夫です、持ってきます」という返答を得た。

「ふう、これで食えるぞ」

俺は一安心した。


しかし、その安心もつかの間。

俺はてっきり、ミルに入った粉チーズのようなものがあるのかと思っていたのだが、出てきてのはタッパーに入った大量の粉チーズであった。

「お口に合いませんでしたか?でも、うちはこの味でやってるんで」

そう、おばさんは俺に告げた。

 

そのあまりにも突然の攻撃的な嫌味に「えwwwいやwwwぬぶふふふふふふwww」と不気味に返すことしかできなかった己が残念でならない。

 

もうここまでくると、味にケチをつけた感じの俺が悪いのか、このばばあの態度が悪いのかはわからないが、俺はこの瞬間に激しい怒りを覚えた。

 

本来であれば、この粉チーズをおばさんの頭にすべてぶっかけ「これで”ばばあパスタ”の出来上がりだな!」とでも言ってやりたいところであったが、周りにお客さんもたくさんいたため、今日のところは勘弁してやることにした。


ただ、次回出会ったときは、”ばばあパスタ”を作り上げてあるつもりだ。

 


俺とばばあの戦いは今日、始まったばかりである!