ただの俺はフードファイターだからの話。

友人から「肉を食べにいこう」という誘いを受けた。


皆さんからは「ニートがミートを食べるなんてシャレですか」と思われるかもしれないが、ニートにだってミートを食べる権利はあるのだ。

話を詳しく聞くとどうやら「ステーキを食べる」ということだったので、てっきり俺にお似合いな高級イタリアン料理の名店にでも行くのかと思っていたのだが、連れて行かれた場所は、江戸屋だったか松坂屋だったか毛利屋だったか・・とにかく”ザ・日本”という店名のところであった。

 


店内に入ると至る所で、屈強な男たちが、まるで貪るかのようにでっかい肉を喰らっていた。


その様子は、まるで獲物を喰らうライオンのよう。

そう、ここはまさに”ジャパニーズ・サバンナ”である。

 

そんな様子に驚きつつも、席に着き、メニューを見るとどうやら肉のサイズを100gから1.5㎏くらいまで好きなように選べるシステムのようであった。

もちろん肉以外のメニューも豊富にあるのだが、やはりメインは大きいステーキを始めとした肉料理の数々のようだ。

 

俺はメニューを見るなり、「俺はフードファイターだから、とんでもなく食うぞ」と友人2人に宣言した。

きっと友人達も「俺だって!」と言ってくれるに違いない、今夜はとんでもない肉パーティになりそうだな、そう思っていた。

しかし、一緒に来た友人2人の口から出てきた言葉は、
「500gくらいなら食べれるかな」
「あ~、でも自信がないから400gくらいにしておこうかな」
「でもさ、これに加えてサラダとライスも付いてくるんでしょ?なら300g・・・」

と、なんとも情けない発言の数々だった。

俺は心底ガッカリした。

 

確かに我々には、牛を丸々一頭食べていたあの若いときほどの食欲はもうないのは事実だ。
だが、そうは言ってもまだ30代。
あのときの若さと食欲はないにしても、肉の1㎏くらいならペロリと、なんならヘロリと食べるくらいの食欲はあるはずだ。

「お前ら・・・俺は情けないよ」

気付くと、俺は説教をしていた。

もしかすると”フードファイター”としてのプライドがそうさせたのかもしれない。

そして、俺はあの青春の日々を、底なしだった食欲を思い出せ!と彼らに涙ながらに訴えた。

ちなみに彼らとは、ここ数年の付き合いで青春時代など知る由もないということは内緒である。

 

しかしながら、そんな俺の姿に心を打たれたのか、「そうだな」と、2人は「800g」の量にすることに決めた。
本来ならば1㎏は食べて欲しい所であったが、まあ今回はそれで良しとしよう。

俺は彼らが食べる量どうこうよりも、彼らが食べようとしてくれた姿勢が嬉しかった。

 

量を決めた2人は、”果たして、そう言ったtakaは一体どれくらいの量にいくのか?”と、とても気になっているようであった。

 

俺はそんな2人を、まぁまぁと落ち着かせ、「注文するときにわかるさ、サプライズ注文だ」とだけ言い、近くにいた店員を呼んだ。

 

そして


「じゃあ、〇〇ステーキの800gを2つと・・・・250gをひとつで」と注文した。


なぜだかわからないが、2人ともとても驚いた顔をして俺のことを見ていた。

 

その後、2人には「裏切り者」「嘘つき野郎」と散々罵られたのだが、俺くらいの熟練フードファイターともなると、量よりも味を楽しむクラスになっているのだ。
フードファイターはただ多くの量を食べればいい、というのは素人の考えである。


250gなら味を楽しむのには丁度いいだろうと思っていたのだが、実際に運ばれて来た肉を見るとその大きさに驚愕した。

なんと、ボブ・サップのパーくらいの大きさなのだ。

800gに至っては、ボブ・サップのパー3つ分ほどであった。

 


食べてみると、確かに味は美味い。

これならば、大きさに驚いたものの250gも余裕だろう。

なんなら、「追加でもう250gいけそうだな」と頭に過ったほどだ。

50gを食べ、100g、150g・・・あと半分ほど、そのときであった。

俺のフォークとナイフがピタリと動きを止めたのだ。

 

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そして、友人2人に向かって、こう口にしたそうだ。

 

「ふう、もう食べれないでげふ」


今日、ここに一人のフードファイターが引退をしたのであった。