ただの怪奇現象に悩まされている話

最近、謎の怪奇現象に悩まされている。

今思い返すと、1月の終わり頃からだっただろうか。

寝室ですやすやと寝ていると、パソコンやテレビが置いてある隣の部屋から
決まって朝4時に”ミシミシ、ミシミシ”という床が鳴る音が聞こえてくる。
この時は、家が古いから床が鳴ってるんだろうとか、寒いので床の板が縮んだりしている音だろう、などと思っていたのだが、それが一週間ほど続き、あることに気が付いた。

 

「いや、これは誰かが部屋をぐるりと歩いているような感じがする」

 

自然と床がミシミシと鳴っているというよりも、
誰かが歩いて体重がかかりミシミシ鳴っている、なぜだかそんな感じがした。

最初は泥棒的なやつだ、と思い、今度は”ミシミシ”と音が鳴り出したところを、
思い切って隣の部屋の扉を開けたのだが、
そこには誰もおらず、”ミシミシ”となっていた音も鳴りやんだ。

しかし、今思えば、俺は乙女でとってもピュアハートの持ち主であるし、
体も清純派女優のようにか弱く、身長178センチ、体重78キロという一見、女の子と間違えられそうな貧弱ぶりである。
もしも、このときに泥棒的なやつがいたら、間違いなく手も足も出ずに一方的にやられていただろう。
ある意味、誰もいなくてよかった。

それからというもの、”ミシミシ”という音で目が覚めると隣の部屋の扉を開け、
また”ミシミシ”と音が鳴ると部屋の扉を開け、ということを繰り返す日々となった。

そして、そんなある日、ついに俺はあることを確信した。

 

あれだわ、これはお化けだわ」と。


確かに俺は怖い話だったり、心霊番組という類のものは大好きだし、
生まれ育った家の隣は墓地だったため、怪異に関しては人よりも肝が据わっていると思っている。
例え、「心霊スポットに一人で行ってください」と言われても、
「はい、行きます」とまったく慌てることなく、普段通りに全裸で口笛を吹きながら心霊スポットを歩き回れるだろう。

なので俺の部屋にお化け的なものが出るとしても、気づかないところでワイワイやってくれる分にはいいのだが、
今回のように俺の生活に影響が及んでくるとなると、さすがにこのまま放っておくわけにもいかず、なんらかの対策が必要となってきてしまうのだ。

だが、俺は除霊ができるわけでもなければ、霊視ができるわけでもなく、
稲川淳二と繋がりもなければ、ぬ~べ~とも知り合いではないし、妖怪と友達になれる時計も持ってなければ、家の近所に鬼太郎に通じる妖怪ポストもない。
つまりは”お化け”とわかったところで、現状としてどうしようもないのである。


そこで俺は即座に「共存」という答えを選んだ。

考えてもみれば、俺は罪深いモテ男である。

”ウィンクひとつで毎日女性を3人殺している”と言われるほどの
お色男殺人鬼の裏の顔を持っているため、もしかしたら部屋に出るお化けは、
俺が知らずのうちに殺してしまった女性ということもあり得るだろう。
だとしたら、このまま下手に除霊などしてしまっては俺に恋する彼女が可哀想だ。
可愛い女の子であったならば、なおさらである!


「俺は女性(若い)のお化けにも優しい男だ、どんと来い」


この瞬間、ここに小動物はおろか、女性のお化けにも優しいという
もはや常識を遥かに超えたとても素晴らしい男が誕生したのであった。