ただの新たなキラの可能性の話

朝、駅で電車を待っていたら、
俺のすぐ横にぴたりと女子高生が並んできた。

”ぴたり”と書くとまるで密着しているかのような表現だが、
本当にお互いの服がくっつくくらいのぴたり感であった。
通勤時間帯ではあるものの、いつも利用している駅は急行が止まらないので、
人で特に混雑をしているというわけではない。
なので、なぜこの女子高生がこんなにも俺と距離を詰めてくるのか、
最初はまったくの謎であった。

 

しかし、俺はすぐに勘づいた。

「あ、俺のことが好きなんだな」と。

そういうことには鋭いのですぐにわかってしまった。

 

確かに俺は178㎝の高身長に加え、スラリと伸びたキリンのように長い脚、
”和製・シュワルツェネッガー”と呼ばれるほどの筋肉質な肉体、
そして、ゆるキャラのようなユーモアに溢れた顔、
まったくセットしていないボロクソ髪型、
枯れた大地のようにカサカサした肌、
水質汚染によって死んだような魚の目等々、
生憎どれを取っても女性から惚れられる要素しか
持ち合わせていない男である。
コンビニの店員しかり、この女子高生しかり、まったく俺は罪深き男だ。


「かー、参った参った、23歳以下は恋愛対象外なんだけどな」
「まあ、でもあれよ、法が許せば、法が許せば全然あれだけども」

などと色々と妄想を膨らませていると、
「もうすぐ電車が来ます」という駅構内アナウンスが流れた。

 

その瞬間であった。

その女子高生は、「はっ!」と何かを思いついたかのように、
バックから手帳とペンを急いで取り出すと、そこに何かを書き出した。


俺は思った。

「これは、連絡先だな」と。
渡されたら、ちゃんと「ありがとう」って笑顔で言おう・・・
そういえば、女性の前で笑うのは久しぶりだな・・・

そう思っていたのだが、
そんな予感は的中することなく、電車が到着すると
女子高生は何事もなかったかのように車両の端の方まで去って行ってしまった。


一体なんだったのだろう。

 

車内で一人悶々と色々な思考を巡らせた結果、
「もしや、あの手帳はデスノートだったのではないだろうか」という、
ひとつの結論に辿り着いた。

彼女が「はっ!」と何かを思いついたようにしていたのは、
きっとその瞬間に死神の目と取引でもしたのだろう。
そして、その目を通じ、俺の名前がわかると
「takaファック、takaファック!takaくせぇ!takaまじドブ野郎!」と
ひたすらそのノートに書きこんでいたのではないだろうか。

 

そうか、あれはデスノートだったんだ・・・
そう考えると、なぜか心臓がドキドキしてきて、
冬空だというのに、電車の中で一人だけ異様に汗をかいてしまった。


その後、どうにか今日は死なずに過ごせたようだが、
デスノートは死の時間も操れると聞くので、まだ安心はできないだろう。

もしも、これから俺と音信が途絶えるようなことがあれば、
「新たなキラが表れた、そしてそれは女子高生だ」ということを
この日記を読んだ方には、是非とも世間に公表をしていただきたい。


では、よろしく頼む。