ただの怪しい人物じゃないからの話

普段、知らない人物から挨拶などされないのだが、少し前を歩いていた小学1,2年生くらいの男の子が、突然、俺のほうを振り返り、弱々しい声で「こ、こんにちは~」と挨拶をしてきた。


犬や猫といった小動物は優しい人と、そうではない人を雰囲気で見分けられるというが、やはり人間の子供も小動物と同じく、そういうものがわかるのだろう。

俺は常ににこにこしていて、とても性格も柔らかく、初めて会う人にもよく「仏と見分けがつきませんね」「oh!ジャパニーズhotoke」などと、言われるくらい人を包み込むような温かいオーラを発しているため、思わずこの男の子も俺に挨拶をしてしまったに違いない。

 

突然の挨拶にびっくりしたのと、シャイさが出てしまい、「へい!」とその場ではよくわからない返事をしてしまったことが悔やまれたが、逆に「へい!って・・・江戸っ子みたいでカッコいい」と思われた可能性だってある。

「そうかそうか、俺も小学生から挨拶をされるまでに・・・」と、なぜだかそのときは清々しい気分に満ちていた。

 


家に帰り、さっそく某SNSで「小学生から挨拶をされた」という趣旨のコメントを発したところ、「防犯対策の一環で、怪しい人には自分から挨拶をするように教えている学校もあるようですよ」という、俺を暗黒面に叩き落とすような残酷な返信を頂いた。

ネットで調べてみると、その返信通り、”怪しい人には自ら挨拶することで、『この子には意識されている』と相手を動揺させる効果がある”とかなんとか書いてあった。

店員が入店時に「いらっしゃいませー」と言うのも、「店員に意識されている」「見られている」と思い込ませ、万引きの防止に繋がっているということを聞いたことがあるが、おそらく、あれと一緒のものだろう。


俺は仏どころか、怪しい人物と思われていたのか。

 

確かに、近所の行く程度だからと、いかにも輩っぽい黒を基調としたラフな恰好で片手に紙袋を持ち、もう一方の手でコンビニで購入したドーナッツを持ち、むしゃむしゃと食べながら歩いていたのは事実である。

見る人が見れば「あいつはパンツ泥棒やってますよ」と、警察に通報していたことであろう。

危ないところだったぜ。


あとは数日後に、地域の回覧板か何かに「黒い服を着た、ドーナッツを食べながら歩いている怪しい男」の目撃情報などが載らないことを切に祈るまでだ。


まったく、子供っていうのは恐ろしい限りだ。

これからは挨拶をされないように、常にスキのない恰好で外を歩きたいと思う。