ただの社長は照れている話

普段、滅多に現場に姿を現さないことから”メタルスライム”と
呼ばれているうちの会社の社長が久しぶりに姿を現した。

いつも俺の挨拶には「あ”あ”・・・」という
生ける屍のような返事しかしない先輩たちであるが、
このときだけは「おはようございます!」「おはようございます!」と
まるで生気を取り戻したかのように元気に挨拶をして、
「はい、おはよう、元気だな」と社長から返事をもらっていた。
まったく、単純なやつらである。

ちなみに、俺も「おはようございます」と
元気よく挨拶をしたつもりだったのだが、
俺には一切「おはよう」の返しはなく、そのまま無視をされた。
きっと、俺があまりにも愛くるしく、可愛い容姿をしているので、
シャイな社長は照れてしまったのかもしれない。
それならば、挨拶の返しがないのもしょうがないだろう。

その後、奥のほうで部署の偉い人と何やらコソコソと話をしだしたと
思ったら、社長は急にくるりとこちらを向き、俺の方に歩いてきた。

まさか偉い人が「あそこにいるtakaというやつは優秀でして・・」と
社長に言ってくれたのだろうか。
それとも社長のほうから
「あそこにいるとても容姿の可愛らしい男の子は誰だね?」との
問いがあったのかもしれない。
どちらにせよ、こちらに向かってくる社長をドキドキしながら待った。

急に肩にポンと手を置かれ、
「キミに次期社長は任せるよ」なんて言われたらどうしよう。

そうだ、社長に任命された暁には、
名前も"taka”から"たかしゃちょー”に変えよう。
どこかの有名youtuberみたいな名前だけど、これはしょうがない。
だって、本当に社長になるのだから。


そんなことを考えているうちに
どんどん、どんどんと社長は近づいてきた。

 

そしてついに目の前に・・・


と思いきや、社長はそのまま俺の横を素通りして、
何も言葉を発することなく帰っていってしまった。

やっぱり照れてるのかな。