ただの29回目の誕生日の話

今日は誕生日であった。


あれだけ会社で「7月4日は誕生日」アピールをしたので、
誰かしらか「誕生日おめでとう」と言ってもらえるはずだと思っていた。

もしかしたら、仕事中に突然音楽が鳴りだし、みんなが躍り出して
「誕生日おめでとう!」とアメリカ的なやつをやってくれるかもしれない。
もしかしたら、仕事中に突然、電気が真っ暗になって
「♪ハッピバースディ~」の歌声と共にケーキが運ばれてくるかもしれない。
もしかしたら、可愛い女子社員から
「うちで二人だけの誕生日パーティをしましょ」と
家に誘われるかもしれない。

  

俺はそんな期待をしつつ、1日中そわそわしていたのだが、
いつまで経っても、音楽は鳴りださないし、電気は消えないし、
ケーキが運ばれてくる気配もなければ、可愛い女子社員が
俺に近寄ってくることもなかった。
もっというと「誕生日おめでとう」の「た」の字すら
誰からも言われることがなかった。

おかしい、みんな照れているのだろうか。
その後も、いくら待っても誕生日の気配を感じないので、
さすがの俺も我慢の限界に達し、

「Aさん、これ次の仕事の資料です誕生日」

「あ、これ部長のとこにもって行って誕生日」

と、語尾に誕生日とつけて喋ろうかと思ったのだが、
これはあまりにも露骨すぎるため断念した。

結局、そのまま何も起きることなく仕事が終わり、
ガックリと肩を落とし更衣室に行くと、年下の男の子がいた。
俺は悲しみのあまり「実はさ・・・今日、俺の誕生日なんだ」と
ボソッと呟くと、「あっ、そうなんすか、おめでとうっす」と言われた。


そして帰りに、松屋に寄り、誕生日だからという理由で
プレミアム牛丼(ちょっと高いやつ)のネギたま牛めし大盛を食べて家に帰った。

俺の記念すべき29回目の誕生日は以上である。


泣いてなんかないったら。