ただの”モテキ”という話

今から4,5年前に
今までモテなかった30歳の男性にある日突然、
モテ期が訪れるというストーリーの
モテキ”というドラマがテレビで放送されていた。
風の噂で「面白い、面白い」ということは聞いてはいたが、
今までまったく見たことはなかった。

そのことを、ふっと思い出し今頃になってDVDで
見始めたのだが、それはそれは噂通りに面白いドラマであった。


そんなドラマの劇中に、


「女の心の中にズカズカ入り込んで土足で足跡つけてこいよ、
モテない男にはモテない男なりの戦い方があんだよ!」


という、俺の心に衝撃を与えたセリフがあった。
なんという素晴らしい名言であろうか。

「そうか、俺のようなモテない男は
土足でズカズカと女性の心に踏み込んでいかねばならないんだ」

謎の自信と謎の勇気をこのセリフから得た俺はさっそく
女性の心に土足でズカズカと入り込むために、
手始めに、普段からよくお話しする仕事先の
可愛らしい女性とのライン交換を試みることにした。


おそらくこれが成功した暁には、自分に自信がつくことだろう。
その自信から今までボロ雑巾だった自分の顔は斎藤工に変貌するかもしれない。
顔が斎藤工になったことで、ナイスバディの可愛い彼女ができるかもしれない。
もしかしたら内田理央さんとお付き合いができるかもしれない。
新垣結衣さんと結婚できるかもしれない。
広瀬すずさんは実は生き別れた俺の妹かもしれない。

そうだ、俺の”モテキ”がここから始まるに違いない!

そう考えるだけで胸が躍った。

普段通り今日も、その女性と適当にお喋りをし、いよいよその時が来た。


「そうそう、よければラインでも交換を」


「あ、そういうのはちょっと・・・」


どうやら、俺は女性の心に土足厳禁のようだ。

後で自分の顔を鏡で見返したがどうみてもボロ雑巾のままであった。