ただの追い込まれている話

俺も応募を考えている
ショートショート小説大賞の締め切りが迫ってきた。

shortshortawards.com

 


が、


締め切りが迫った今になっても、
一向にストーリーが浮かばないという緊急事態に陥っている。
小説を書くにあたり一番大事なストーリーが浮かばないとなると、
もはやお手上げ状態であろう。

 

俺のアイディアの中身は現在、一人暮らしの
冷蔵庫の中のように、すっからかんである。
このような簡易ブログに書くことであれば、
そのアイディアという名の冷蔵庫の中のわずかな食料を
組み合わせ、やりくりすることができるのだが、
小説ともなるとまったく適材の食材が見当たらない。

とはいえ、締め切りが2月末なのでいくらショート小説とはいえ
そろそろ冷蔵庫をひっくり返してでもまだ見ぬ隠れた食材を
発見しないことには、間に合わないだろう。


俺の予定では、
このショートショート小説大賞で何かしらの賞を受賞し、
文学界に彗星の如くデビューを果たすつもりだ。
そうして、小説の依頼やエッセイなど様々な随筆の
仕事依頼をこなして着実に実力をつけていき、
あるとき書いた小説が異例の大ヒットを飛ばしベストセラーになるのである。

 

その後、ドラマ化&アニメ化が決定し、
原作者の権力と金を思う存分発揮し
ドラマの配役は広瀬すず有村架純新垣結衣を起用して、
裏でどうにかちゅっちゅしてやるのだ。

ちなみに最近、俺の中で深田恭子が熱いので、
彼女もどうにか捻じ込みたいと思う。

一方、アニメの声優には
「とにかく演技とかよりさー、可愛い子にしようぜ」と、
これまた原作者の権力を最大限に使い、
可愛い声優さんばっかりを集めたアニメを作るのだ。
もう誰も俺を止めることはできない。

 

そしてその後もまだまだ勢いは止まらず、
わずか数年の間に数々のベストセラー小説を発表。
「まだまだこれからだ!」と周囲が期待する中、
俺はある決断を心の中でしつつ、
作家では異例の東京ドームでサイン会&トークショーを開催するのである。


まさに笑いの大爆発があちこちで起こるという
文字通りの大爆笑トークで会場を真夏のアフリカのように
暖めたところで女性ファン5万人が見守る中、突然こう言うのだ。

「takaは普通の男の子に戻ります」

「・・・えっ」

会場中が絶句の中、
そのまま万年筆をステージ中央に置き去っていくという
山口百恵スタイルですっぱりと文学界を電撃引退。
ちなみに万年筆を置いた理由は
「一度も使ったことないけど、マイクに代わるものが思いつかなかったから」
とのことである。

 


文学界とはこれでお別れをし、印税生活をすること数十年。
ちょこちょこと「あの人は今」のようなテレビで
取り上げられることもあったが、
誰もが文芸界の山口百恵ことtakaという名前を忘れたある日のことであった。

 

夕暮れの公園で一人ベンチに座り、
遊具で遊んでいる幼い子供達をみていると、
その中の女の子に「おじいさんはなにをしている人なの?」と聞かれ
「おじいさんはのぅ、昔はたくさん本を書いていたんだよ。
ドラマ化とアニメ化もされて・・・
当時の大人気女優、広瀬すず有村架純新垣結衣とちゅっちゅしたんだよ・・・
お嬢ちゃんはきっと知らない人達だろうね・・・ふふ。

でものぅ、
本だけ書く人生なんてもんは、実際やってみたらつまらない。
・・・当時のわしはそう思っていたよ。
他の世界を見てみようと本を書くのをやめたのじゃが、
わしには本を書く以外の才能がなかったようじゃ。
今では、ほれ、印税で得た金も使い果たしこのザマじゃ、ほほっ」

という具合で、その幼い女の子に話をしてやるのだ。

そして、それを遠くで見ていたその女の子のお母さんが
「不審者に娘が誘拐される!」と勘違いし、
警察に通報、俺は誘拐未遂で逮捕されるのである。

残ったわずかなお金を使い、裁判を繰り返したが
結局、濡れ衣が晴れないまま拘置所入り。
「拘置所で余生を過ごそう・・・」
そう諦めてかけていたとき、
刑務所内の裁縫仕事で誤って、針を指に刺してしまい
それがもとでわずか186歳の若さで命を落とすのであった・・・。

 


このショートショート小説大賞を通して、
このような夢を描いていたのに、このままでは何一つ実現しないではないか!

早くどうにかしないと。