ただの空気清浄機の話

会社に空気清浄機が導入された。

とても古い建物の中に会社があるため、
俺は年中大量にホコリやチリのようなものが
舞っている環境の中で仕事をしている状況だ。

さすがにずっとこのホコリやチリまみれの空気を
吸い続けていると、生死に関わるのではないかと思い、
何週間か前に、上司に「買っておくれよ」と頼んでいたのだが
どうやらちゃんと購入してくれたようである。

 

「掃除機すら買ってくれない会社なのに・・」と
他の社員達は不思議に思っていたようだが、
あいつらはわかっていない、
勝因は間違いなく俺の抜群の可愛さにあったということを。

上司に「買って」とお願いしたときの
俺の瞳をキラキラさせた愛くるしさとキョトンとした無垢な顔、
まるで寺田心くんを思わせるその姿に、
さすがの上司も心をキュンとさせてしまったのだろう。
可愛いというのも罪深いものだ。

 

そんな可愛い俺が、
さっそく空気清浄機のスイッチを入れると
「ウォー」とモーターが唸りだして、空気の清浄を始めた。
空気は目にはみえないのでなんとも言えないが、
空気清浄機のやる気だけは伝わってきた。

しばらく運転させていると、
社員の人が「これマイナスイオンも出てるんだって」と言うので
「どれどれ」と俺もマイナスイオンを浴びに近寄ったところ
空気清浄機の「ウォー」だった唸り声が「ヴォー!!!!」と力強くなり、
今まで点灯していなかった赤いランプが点いた。

そのときは「俺の可愛さに照れたのかな」としか思わなかったのだが、
後々、説明書を読んでいると衝撃の文章が書いてあった。


「臭い(ペットやタバコの臭い等)が強い場合、自動で「強」モードになります」

どうやら俺は空気清浄機に
「雨に濡れた犬のような悪臭を放つやつだ」と
認定されてしまったようである。
俺はこの衝撃の事実に震えるしかなかった。


お、俺は臭いんだ・・・!


どうやらこの会社には、ホコリとチリのほかに
俺という悪臭も存在していたようである。