ただの老舗の蕎麦屋の話

課長が「たまには美味いもの食べに連れて行ってやるよ」と言われ、
会社の数名と一緒に、お昼ご飯を食べに行った。

連れて行かれた場所は、
古き良き時代を感じるとても雰囲気のいい蕎麦屋で、
課長が言うには100年近く続く老舗だそうだ。
俺はこのような昔ながらの古い感じのお店が大好きである。

席に着くと、
おそらく店主であろうお婆さんがお茶を持ってきたので

「いやーすごいいい雰囲気のお店ですね、
僕、こういう雰囲気大好きなんですよ。
京都っぽいっていうか、日本の古き良き時代というか、
ノスタルジーを感じて、なんだか懐かしい気分になってしまいましたよ。
いいですよね~、今日、初めて来たんですけど、すごい気に入りました~。
そうそう、僕はね、将来的に都心から離れた静かな場所にこういう家を建てて
ゆっくり過ごしたいんですよ~」


と、お店の素晴らしさと自分の夢を語ったところ

「そうですか」

と心温まる生返事をいただいた。
しかも、目すら合わせてもらえず、
「俺は相当イタいやつに思われたんではないか」と不安になったほどだ。
お婆さん的には
「え、なんかこいつ、突然語りだして超キモイんですけど」だったのだろう。

いいのだ、いつの時代も偉人は変人なのだから。
偉人であるからこそ、凡人には奇行に見えるのだから。


その後、出された蕎麦はすごく美味しかったのだが、
なんだか切ない気持ちを今もなお、ずっと引きずったままである。