ただの初めての・・・話

今日は秋の健康診断があった。

最初に聴診検査をしたのだが、
聴診器を俺の胸にペタペタしだした途端、
医者の先生が「・・・んっ?んっ?・・・あれ?」と言い出したので、
俺は健康診断の開始早々に死を覚悟した。

死なないにしても、内臓系に異常があり、
即時の入院を勧められるに違いない。
そのようなことになり、この日記に「入院しました」と書こうものなら、
それを読んだ女性たちが俺を心配し、
病院にかけつけパニックが起こるのではないか。
そして日替わりで大勢の女性たちに看病されるという
ハーレムライフが始まるのではないか。
と、様々な心配をしたが、特に問題はなく健康のようだった。

なんなら「心臓はすごい元気に動いている」とまで言われ、
俺のハーレム病院ライフの夢は数秒で打ち砕かれた。


その後も、色々な検査があり、最後は採血だった。
何を隠そう俺は採血が大嫌いだ。
だって、痛いんだもの。

しかも俺は採血をされると貧血を起こしてしまうという虚弱体質のため、
自分の順番になったところで、看護婦さんに「横になって採血をしたい」と
伝えたところ、ベットのある別室で横になりながら採血をすることになった。

幸いにも採血は無事終わり、貧血も起こらなかったのだが、
採血中も、少し横になって休んでいる間も、
なぜかずっと看護婦のおばさんに手を握られていた。

俺はまだ女の子と手も繋いだこともないというのに
初めての手繋ぎをおばさんに奪われてしまったのだ。

「初めては好きな人って決めていたのに・・・」
「でも・・・人の手って暖かい・・・」

俺は今回の採血で
血の他にも何か大事なものを失ってしまった気がしたのであった。